レナード バーンスタイン:ミサ曲 (1971) ザルツブルク初演<You Tube画像追加あり> |
リハーサル中は知らなかったものの、今回がバーンスタイン:ミサのザルツブルク初演。
新聞で知りました(苦笑)。大抵演奏者は良く分かってないことが多いのです・・・。
大編成オーケストラ+オルガン+ピアノ、ロックバンド(エレキギター2本、エレキバス、キーボード)、ストリートコーラス、子供合唱、混声合唱、バリトンソリスト、ボーイソプラノソリストというもの。
編成が大きいので、残念ながらなかなか演奏される機会がありません。
作曲者指定の録音テープの再生、ロック、ブルース、ゴスペル、現代音楽が混ざった非常に興味深い音楽。
しかも普通のミサが行われているカトリック教会を3日間借り切り。
ロックバンドが出てくるオーケストラのミサ曲といっても、イメージがないはず。
以下のアドレスで聞けます。
試聴サンプル、こちらへ
ストリートコーラスが活躍するのは、ディスク:1 19. ミサ曲 9.福音書-伝道:神は云われた。
ロックバンドが活躍するのは、ディスク:2 11. ミサ曲 105.神の仔羊。
両方出てくるのは、ディスク:1 10. ミサ曲 4.告解 2.進句:私は知らない。
共演したイギリス人バリトン歌手 John Cashmore氏はバースタイン:ミサ曲のスペシャリスト、You Tubeにも出ています。
(Photo by lara>本当に、このバリトン歌手は素晴しかったです。ミュージカルのように自然に入るレチタティーヴォ、わかりやすい言葉、行き過ぎていない確実な演技力。。脱帽です!)
白い服を着ているボーイソプラノのAlois Mühlbacher君はまだ12歳、舞台慣れしているだけではなく、歌が非常にうまくびっくり。将来相当な大物になりそうな予感。
(l: >この男の子の声は、大きな会場に伸びわたってゆく素直な声。ただ、ちょっと心配なのがビブラートが多いところ、、
そのせいで、「ちょっと上手なソプラノ女声」みたいになる危険性大!!!
これを真っすぐ歌う事も出来るのならば、今すぐどこででも通用する素晴しい歌手です。ガーディナーが飛びつきそうな!(笑
ビブラート無しでも歌えるのかが物凄く気になる存在です。)
ストリートコーラスは「演劇学科」の学生達、残念ながら歌専門ではない彼らにはロックの歌やクラシックの部分の歌が難しすぎた様子・・・。ロックは誰でも上手く歌えるわけではないので大変。
リハーサル時はなんとか頑張っていたものの、明らかな指揮者の計画ミス。
この日はオーストリア人の女性指揮者の企画、自分でオーケストラを集め、地元アマチュアコーラスに声をかけ、ザルツブルク初のバーンスタイン:ミサ曲を上演。
1971年の作品なので、元々非常に演奏することが難しいのに、指揮者の基礎能力が低く、こちらは大変。
私自身もドイツのプロオーケストラを中心に指揮しているので、大事な場面で「頭」を前後に振ってはいけないとか、テンポが遅い場面こそハッキリとサインを出すというのは、指揮をする人間の常識中の常識。
本人のせいでオーケストラがずれても、「ちゃんとこっちを見て!」、「ちゃんと合わせて!」など、オーケストラのせいにするばかり・・・。
曲がとても楽しいのに、全員凍りつくようなリハーサル。
(l: >そうじゃなくても凍てつく教会なのにね〜〜T。T)
なにしろこの人数。
(Photo by lara)
他人のせいにしている場合ではありません(苦笑)。
最高気温が13度以上に上がったザルツブルクでも、カトリック教会の中は暖房がないので、寒い寒い!
休憩を入れて上演時間は2時間30分。
お客様はこんな服装で、
絶対コートを脱ぐこともないので、私は黒いコートの下に全くの普段着(笑)。
(Photo by lara)
これからの季節、教会での演奏会はこんな服装にしないと、寒すぎて演奏できません。
何しろこちらの国には「使い捨てカイロ」がありません!
リハーサルにも持っていたところ、皆驚いて「見せて見せて!」と寄ってきました。
ドイツのプロオーケストラ団体の労働基準に、10度以下の場所では演奏してはいけないという禁止事項があるくらい。
スロヴァキア人テューバ奏者のMは薄着で寒くない???
教会にロックバンドの証拠写真(笑)。
ビデオ撮影が上からあったので、ブログ用写真撮影は下から控えめに(苦笑)。
2日間の本番は終了。
何でも他人のせいばかりにして、良い音楽を追求しない指揮者との長ーい日々は終わりました。
地元政治家や企業を取り込むのが上手だと、音楽的に分かってない人でも得ですね。
さらに後日談。
2日間の演奏会後、ザルツブルク新聞を読むとさっそく批評記事が。
あれ??? 曲目解説と曲の政治的背景、出演者のごく僅かなプロフィール
最後はお勧めCDだけ!?
一言も演奏内容には触れられてません(笑)、批評家の正しい判断に拍手!!!!
l: > 困ったときは事実総ざらえ〜、て、言いますものね、ほほほほほ。。。
^0^;√
お越しくださって写真も撮ってくださったlaraさん、賭け師Mさん、ありがとうございました!
sepp
lara感想
私は、事情を知りつつ、
問題点(指揮技術など)を目の前にして驚愕に頭を抱えつつ、
それでも楽しめました。
その原因の一つが合唱。
尊敬する作曲家、三善晃先生が、授業でおっしゃいました
「ぼくはハンカチ無しで合唱コンクールの審査が出来ません。
うまくてもヘタでも、なんでも、こう、
大勢の人が一つの歌を一生懸命歌っているというのに
どうしてもヨワいのです。 なんだかすぐに涙が出てきます」
こんな危なっかしいヒトに審査員長を任せていていいのかどうかは別として。(笑
私も全く同感なのです!!!
合唱のチカラは、すごいなと。
そして後半に、合唱の人たち全員がブルースの手拍子をして、
テンポが少しずつ上がっていくストレッタ部分があります。
指揮者が違う事してても、
ストリートシンガーのオネェちゃんたちが見当違いのノリを披露しちゃってても、
感動しました。
それに子供達の合唱が入っちゃったらもうイチコロです(笑
おかぁさんじゃなくてもうるうるです。
いくらベタでも良いんです。
こういうところが、まさに「音楽の力」だと思い知らされます。
そしてこの演奏会を楽しめたもう一つの理由は
「音楽の力を利用した作曲家の強いメッセージ」
シェイクスピアの名作を利用して人種差別問題を提示し
今現在の国際問題をも鋭く斬る作品となった
「 ウエスト・サイド・ストーリー 」
で当時大変な物議を醸し出したバーンスタイン。
ゴスペル(黒人)、ストリート・シンガー(当時は南米系人種が圧倒的多数かと思われます)をオーケストラと共演させ、コンサート用にもなるメッセージ性の高いミサ曲に仕上げる事も共通した信念から生まれたものである事は間違いありません
。。。例えばその当時、オーケストラ奏者に黒人は一人もいませんでした。
つい最近までの話です。その当時アメリカで、クラシックのコンサートホールの舞台上に黒人を一度も見た事がない観客達が一体どれほど沢山いたでしょうか!
それだけでも大きな意味がある事だと思います
初演はバーンスタイン本人が指揮をしたのでしょうか?
ロック、ゴスペル、ストリートシンガーの人達には
リズムや旋律を歌って説明したのでしょうか。
バーンスタインってすごいひとなんですね。
ザルツブルク音楽祭にもとても縁があったバーンスタイン。
そのミサが今までザルツブルクで演奏された事がなかったのは不思議ですね。
それにしてもseppさんは本当に大変だった事と思います!
リズムを一人で引き受ける場面も多々あり、周りに助け舟を出し、、
まったくこういう「指揮ちょっとしてみたかったんだもん」指揮者は、
こういう人達の努力のおかげで演奏会が成り立っている事を自覚し感謝するべきだと思います、
が、 、 、
気が付いてもいないのでしょうね。。。
みんなにわかる言葉で、みんなが理解する音楽で、言葉を伝える。
伝道の真髄を20世紀に受け継いだ作曲家の意図は
いろいろなホンモノの音楽家の助けを借り、
へなちょこ指揮者ぐらいでは揺るぎませんでした。
seppさん、ウラのボス、お疲れさまでした。
メッセージしかと受け取りましたよ。
lara
教会からのご生還、おめでとうございました!
懐かしい顔も拝見できてうれしかったです。
おつかれさまでした!
祝祭劇場大ホールのあの日とは違って、とにかくいろいろな意味で大変な本番でした(笑)。寒い教会での演奏会、懐かしいでしょう?
もう一人Sandra女史も参加予定でしたが、ブラスオーケストラバックにソロを弾く仕事があり、本番に来れなくなって残念でした。
sepp
わからない言葉を使ってゴメンナサイ!!専門家として本当は恥じるべきです。。ちょっと怠惰な書き方でした。
shun様はお芝居のお方。大勢で何かを創ってゆく過程を経験で知っている、同じ人種とお呼びしても良いですよね?
なんだかきっとわかって下さっている気がしてとても嬉しいです。
なかなか思うようにはいかないけど、とにかく同じものを創って行く。それ、本番になったらもううまいヘタあまり関係ないんですよね。合唱好きだなぁ。合唱のプロには確実に殴られるだろーなー。
lara
想像を絶する過酷なコンサートだったようですね・・・
しかも「ジコチュー指揮者」からの砲撃(?!)もあったようで、、、お気持ち察します。。。
てか、このような「企画だけで名を挙げようとする」指揮者を、、、
「指揮屋」と呼んでいいですか?
(「政治屋」のように・・・)
以前、「企画」のことで話しをお伺いしましたが、こういうことだったんですか・・・・・
クラッシックの現実を垣間見てしまったようで少々ショックです。
でも、、、
>合唱のチカラ、、、
この言葉には救われますね。
音楽はこうでなくてはっ!
あと、、、
新聞の批評とseppさんの思うことが一致しててよかったですね。
これは演奏する方々への心強い見方になったと思います。
今回のお話は、この業界の「ほんの一部分」ではあると思いますが、ある意味、すごく勉強させてもらいました。。。
こうした「指揮屋との仕事」に二度と遭わなければいいですね・・・・・
素晴らしい表現「指揮屋」、今後使わせていただきます!(笑) 確かに私たちも「音楽家」などという大層な名前は不適切ですし、世間で思っているほど芸術とは程遠い世界です。
この方も「指揮屋」くらいのレヴェルになってもらえると、もっと助かりますが(笑)。
私にも砲弾は2発ほど当たりましたが、すぐ大砲は他の方向に向くので大丈夫です。どこの世界にも同じことはあると思いますが、久々だったので驚きました。
新聞の批評家もさぞ驚いたことと思いますが、非常に良心的な批評家だということがよくわかりました。
お会いした日に話したこと、よく覚えていて下さったようですね、ありがとうございます。
これにめげずに(?)毎日精進していきたいと思います。
そろそろブログにSuzukkyさんが登場するでしょう?!
sepp